無性に高台に登りたくなる癖

最寄駅に着いた時点ではまだそれ程遅いという時間ではなかった。真っ直ぐ家に帰れば世界の車窓からに十分間に合う位やった。

しかし、この時の鷲は何を思たのか世界の車窓からを別に見んでもええわと家と違う方向へ歩き出した。何か無性に高台の景色のええ所から夜景や星空が見たなったん。何でかは知らんけど、酔い覚ましもしたかったかし丁度ええわと高台へ向けて歩き出す。阪急をくぐって近年大屋敷を分割して開発された住宅地に出た。一軒一軒はそれでも結構な坪数があるんやが、それが元々は一軒の家やったんやから凄い。鷲が小さい頃は観音林は豊かな屋敷林で覆われ、六甲山に登る時は最初に“山に入っていっている感”を味わえる場所やった。
確かに切り開かれて開放的で明るく洒落た宅地にはなったが、鷲は鬱蒼と茂る屋敷林の方が好きやし、どデカイお屋敷が好きなんよ。

そのまま市バス38系統のルートを北上する。バスはとっくに終わっとうし、こんな時間誰も歩いてない。渦森橋を渡り渦森台2バス停から団地内の道を上がっていった。昔ここに住む友達の家まで延々歩いて遊びに行き、帰りも延々歩いて帰っとった。あの時は若かった。今やったら無理。ふと懐かしくなって団地の案内図(集団表札といえばええかな?)を見たら、彼はまだその団地に住んでいるようやった。
階段を上がり3丁目バス停から眺める。階段状になっている団地なので、ここでも十分眺めはよい。更に上がっていき、渦森展望公園へと上がった。
流石にこんな時間に人はおらなんだ。子供やヤンキーはおらず静かやった。裏がすぐに山になるので野生動物が出るし、こんな寒い時期に態々階段を登ってくる人はおらんわな。
鷲は昔を思い出しながら、夜景や星空を眺めた。それこそ体が凍る位の長い時間そこにいた。

中学校の時の友達とは交流が全くなく、卒業後どうしとんか全然分からん。
やはり定期的に会うとかんと、疎遠になるし会いづらなるわな。長いこと会うてへん人から突然会おか言われたら、何か下心あるんちゃうか思てまうしね。

歩いて下りて帰った。白鶴美術館辺りの住吉川も夜景スポットで、つくづくええ所やなと思た。