映画の感想2

「ゴシップ(2000)」⇒ジェームズ・マーズデン主演。

デリック(ジェームズ)、キャシー(レナ・ヘディ)、トラヴィスノーマン・リーダス)の3人は、メディア論の授業のレポートを作成する為に、権力者の娘ナオミ(ケイト・ハドソン)とボー(ジョシュア・ジャクソン)のお高くとまっているカップルの噂を流すことにする。体を許さないことで有名なナオミとボーが深い仲になったらしいという噂を流したところ、瞬く間に噂は尾ひれをつけて蔓延し、堅いナオミをボーがレイプしたという話まで発展してしまい、遂にボーは逮捕されてしまう
洒落にならない事態に気付いたキャシーはボーの無実を晴らす為に警察に掛け合うが相手にされない。

ゴシップという根拠があろうがなかろうが面白がって伝染する噂が飛び交い、どれが真実か分からなくなってしまう。無責任なゴシップがどれほど人生を狂わせるかという結末は、見ていて恐ろしくなるものがある。

感想
鷲震災に会うたから分かるんやけど、人間て「真実を明らかにせよ」と言うとってもあんまり真実には関心は無いんよね。真実よりももっともらしい嘘の方が通りがええ。
揺れが収まってから色んな情報が飛び交った。「津波が来る」だの「今度はどこそこで震度なんぼの余震が来るらしい」だの。パニック時は、その発言の裏付けが取れんでも、最悪の事態を想定して信じてしまうもん。

デリックは絶えず嘘を吐いているが、高校の時に合意のもとでの性行為を後から神経質になった彼女から「レイプ魔」呼ばわりされて、金持ちのデリックの親が金で揉み消したことになっているという話は、結局嘘やったんやろか?
野放図にゴシップを伝達した「みんな」には何もお咎めも責任もないのだろうか。

この映画ではボーが一番損な役回りである。
権力者の娘ということもあり、物的証拠がないのに逮捕されるのは恐ろしいものがあった。唯一の証拠は彼女が「ゴシップ」を聞かされている内に、「ボーにレイプされた」と思い込んでしまい、その証言だけで逮捕に至ったわけだ。性犯罪に関してはただでさえ女性の証言に偏った捜査になるというのに加え、その女性の裏には大物政治家が付いているとなっては、ボーが何を言っても嫌疑が晴れない。

先月のこと、痴漢で逮捕された小学校教諭が「証拠がないから犯罪証明ができないという理由にはならない」と控訴を退けた。
要するに『証拠』がなくっても犯罪として認めるということで、これではなんぼでも冤罪は発生しうる。しかもこの事件では女性の証言のみが採用されており、事件の再現実験を「正確性に欠ける」との理由で全く無視している。恐ろしいことだと思う。
中立であるべき司法が、偏った価値観で他人の人生を潰す行為を知って、日本の司法は死んだんやなと思た。裁判の意味がないわ。

日記が長なってもたが、もうすぐ裁判員制度が始まるから一つ参考(にならんが)に話をしたいと思う。



ある男性に起こった悲劇

彼はまだほんの子供だった。
彼は風変わりで独創的な世界観を持っていたせいで、周りから「あいつは異質」と嫌われていた。彼を好く人間は極々少数派で、同じクラスだけでなく学年中から浮いた存在だった。

事件は突然起こったが、ある意味起こるべくして起こったのかもしれない。
事件とはこうだ。
とある日の学級会にて、彼はやり玉に挙げられていた。何故やり玉に挙げられていたのかは分からない。そんな事はどうだっていいのだ。どうせ関係ない。彼はスケープゴートに過ぎないのだから。

みんなが責めたてる。そんな中一人の女子が立ち上がってこう告白したのだ。

「××君は野外活動の間ずっと私につきまとってきました。特に肝だめしの時に、『Mちゃんあ〜そぼっ』と言って後ろから抱き付いてきました。」
みんなその話を聞き入る。彼女は芸能界を目指しているらしく話はとても上手かった。

「・・・・私はショッ・・クで。・・・・め、滅茶苦茶ショックだったんですぅぅ・・・ウワァ〜ン」
彼女は途中からヒックヒック嗚咽しながら言葉を吐き出し、言い切った後は堰を切ったかのように号泣しだした。

彼女の発言は彼の特徴やいかにも言いそうな言葉や口調を真似していて、あたかも実際のことのように話した。

しかし、事実はそうではなかった。彼はそんなことはしていないのである。身に覚えの無い罪状で吊るし上げられてしまったのである。彼は元来クラスで孤立している。以前同じクラスの女子児童とトラブルもあった。
誰も味方はいない、唯一中立の立場である先生も、当事者の二人しか真実が分からないので何も言えないでいる。

「僕はやっていません。」彼はきっぱりと否認した。否認し続けるしか手段がなかった。

彼女の迫真の「アカデミー賞」級の演技でクラスの大半は彼女を、「××君にいやらしいことをされた被害者」と信じ込み、彼に対しては「最悪最低のド変態男」という目で見た。

彼女は泣き続けている。机に伏せて肩を震わせながら号泣をしている。彼は追い詰められた。みんな延びてしまった学級会が早く終わって欲しいという気持ちもあったかもしれない。次第に「××はさっさと謝れ」という空気になった。

彼は否定し続けた。その度に野次が飛ぶ。

「お前早よ謝れや。」「さっさと謝らんかい。」「ええ加減にせいや。」と口々に彼を非難した。とても荒い口調で、彼にはクラス中から寄って集って罵倒してきたように思えた筈だ。
彼にも限界が近づいていた。ここは裁判所ではないたかが小学校の学級会である。物的証拠がどうの目撃証言がどうのなんていらない。真実がどうなのかは問題にされない。ただ「××君がMちゃんを襲ったらしい」というもっともらしい証言だけで十分なのである。
そして、××君が罪を認めてMちゃんに謝りさえすれば学級会は終わって帰れるのだ。

この時彼の頭によぎった。
「野外活動ではしゃいでいた時があったけど、みんなが言うようにそう誤解されるようなことをしたかもしれないな」と。
何せたった一人の小学生がクラス中から責めたてられ続けているのだ。先生も味方ではない・・・。
彼はみんなの目が、「お前は犯罪者だ」と言っているように感じた。

「もう無理だ。これ以上は耐えられない」彼は抵抗が虚しいことが分かった。

「・・・ご・めん・・・なさい。・・・すみま・せ・・んでした。」とポツポツと小さい声で言った。

その瞬間「やっぱりお前が犯人だ」という空気と、「やっとこれで帰れる」という投げやりな空気が漂った。そんな中、彼女だけは泣きながらも「勝ち誇った」顔になっていた。

小学生だからセックスなんて知らない。小学生で思い付く一番いやらしいことを彼がしたのだということは、ずっと消えることなく、孤立気味だった彼は男子からも女子からも孤立してしまうことになる。特に女子からは、「ドスケベ」「変態」と罵られ続けることになった。彼にとっては毎日地獄の日々だったに違いない。四面楚歌とはまさにこのことだ。

そんな彼は嫌われ者のまま進級した。進級したクラスでも××君とMちゃんは同じクラスになった。

時は流れまたもやトラブルに巻き込まれた彼。学級会で吊るし上げになっていた。激しいトークバトルが繰り広げられている時、見計らったかのように彼女が「例のネタ」を持ち出した。その時にはそのネタは定説になっていた。

「前の学年の時に、私は××君にこういうことされた」というのを、素晴らしい演技で披露した。

彼は思った。
「Mちゃんは一生僕を許さない気でいる。ちゃんと謝ったのに・・・。」
彼女は私立中学へ進学して、彼とは離れ離れになった。

この件では××君=被害者、Mちゃん=加害者と単純には決められない。
敢えて言えば両者が被害者なのだ。××君は名誉が大きく傷付けられ、Mちゃんも「××君にセクハラされた」という妄想を信じ込んで一生その傷を負うことになるだろう。


時は流れ大学生になった彼は、通学途中でMちゃんと再会した。大人になっていたが、お互い一目で分かった。忘れようの無い相手だから。Mちゃんと××君は車内ですれ違ったが、彼女は彼を睨みつけた。恐ろしい目だ。
彼は一生涯小学校の学級会という名の裁判で下った判決に影響され続けるのである。




・・・という事がありました。

更に時が経った今でも、その彼は未だにその事件から逃れることが出来ていません。

彼の名は、「ひたち野うしく」。そう私です。
人が人を裁くからには完璧というのは無いのかもしれません。しかし、真実の追究は中立な立場でなされるべきでしょう。どちらかに偏った視点での捜査は、重大な過失が生まれる温床となります。

裁判員に選ばれた人はどうか、「もっともらしい噂」でなく「真実」を見て下さい。