間に合わなかった

病室に入った瞬間に間に合わなかった事のが分かった。足元から崩れそうになった。生体モニターの心電図がフラットラインになっとった。看護婦さんが祖母の体に付けられていた管や電極を次々に外していっていた。

鷲「いつ・・いつですか?」
看護婦「3:10頃ですね。」

何と鷲が到着する3分前の事やった。丁度さっき駅を下りて雨の中走りながら、Nach の Angel が頭に浮かんどった頃やった。それを知って、何故にあの時快速に乗るのを止めたのかと悔しくなった。快速に乗っていれば、亡くなる前にもう一度会えたのに・・
呼吸はかすかにあったが、次第にそれが無くなっていった。先生が来て、3:15祖母の死亡が確認された。祖母の頬ににそっと手を触れた。肌に温かさがあった。眠るように、ひっそりと消えゆくように亡くなっていった。
程なくして両親が到着した。

カーテンが閉められ看護婦が死化粧を始めた。ロビーへ移動し、椅子に力なく座った。何故あの時快速に乗らなかったのか、何故普段なんぼでも寄れる三宮の各鉄道駅へ寄ったのか、何故混んどんのが予想できる本屋へ行ったのか・・・悔やんでももう遅いが、散髪が終わった状態からのやり直しが効けば と考えた。
姉へ電話を掛けた。祖母が亡くなったから至急神戸へ帰ってきてと手短に伝えた。

外の雨は激しさを増し、雷が落ちた。その瞬間停電になった。
死化粧が終わった。入院が長引くことも予想されたので、色々と入院道具があったが、それを整理していく。
葬儀屋から寝台車が到着し、祖母の遺体と共に父が葬儀場へと向かった。母と鷲は病院から死亡診断書を引き取り、一旦家に帰ることになった。担当の先生にお礼を言い、病院を後にした。

途中のコンビニで死亡診断書のコピーを取った。しかし、意図しない方向でコピーされ、途中で切れてもた。腹立たしい。こういう無駄な出費は額の大小に関わらず腹が立つ。金返せ。