今から思えば

伯母が来て彼岸の墓参りに出掛けた。
行きしは運転した。基本的に丹波地方にある墓は伯母の家からは遠く、電車だのバスかタクシーを乗り継いでいくと大変な一日仕事になる。
いつものように裏六甲の道を飛ばし、篠山市にある墓へ参った。
帰りは裏六甲にあるファミレスで昼食を取った。確かその後に病院で下ろしてもらった気がする。

祖母のベッドには「絶食」の札が掲げられていた。兎に角「生きていくということは、食べるということ」のような食欲旺盛な祖母が、食事を取ることすら出来なくなってしまった事に愕然とした。「食べる」どころか呼吸すら困難で、「息苦しいか?」と聞くと首を縦に振った。

喋ることが出来ないので、意思疎通に困った。そこで鷲は、ノートに あ から ん まで書いて、その文字を指差して貰うことを提案して、早速母がノートにあ、い、う、え、おと書いた。祖母にそのノートを見せて、鉛筆でその文字を指してもらおうとしたら、もどかしいのか祖母がノートを手に取り、

「一人ふやして下さい」

と書いた。これは結局どういう意味なのか分からなんだ。未だにどういう意味だったのか謎のまま。
祖母はその文字を書いた後、鷲の手を強く強く握り締め、ずっと天井を指差していた。
「電気まぶしいん?カーテン閉めよか?」と色々と来てみるも、首を横に振るばかり。ずっと天井をじぃーと見とった。

そうこうしとう内に伯母を送らんとあかん時間になって、
「伯母ちゃん送ってかなあかんから帰るで。」と祖母の指を解こうとしたが、解いた指をすぐに握り直して、時間が掛かった。

伯母を駅まで送った。伯母も言わば高齢者になるので、家から駅へ向かう道中に座り込んで休憩を取らなければならなかった。
ジョイトイさんからお誘いがあったが、夕方のバドミントンがギリギリの人数らしく、残念ながら断ることにした。