学生街の喫茶チェーン店

そのまま道路挟んで向かい側にある喫茶店に入った。まとまって空いとう席がないから、店員さんに言うてテーブルを動かしてもうて、6人分の席が出来た。
鷲は居酒屋で満腹になっとったから、そんなに大きくないサイズのコーヒーを頼んだ。話題はM田さんの就職についての件やら、今朝起きた能登地震に関連して、この辺津波起こったらどうなるいう話やら。

小見出しで某フォークソングっぽいのをつけたが、この店はまさに大学が数多くあるこの街の中心部にあって、鷲ら以外は学生さんが期末試験に向けてヘッドフォンで音楽聞きながら何やら英文を訳したり、女学生が友達同士で談笑しとったりと、まさに鷲の脳内にある「学園生活」なイメージそのものやったんやわ。


鷲の大学生活は孤独やった。結構な距離(滅茶苦茶遠距離やないが)の通学やったし、サークルに入ったら帰宅が22時過ぎてまうから、結局入らなんだ。鷲ずっと弁当やったんやけど、学生食堂が「昼混雑してる時は持ち込まんといて」とオバチャンに追い出されてからは、なるべく人のおらん屋上への階段の踊り場やら、特に教室や教授部屋も入ってない階のベンチで食べたりしとった。
外の芝生広場で学生生活を謳歌しとる連中をどこか別世界の人間を見るような眼で見とった。羨ましいけど、そっちの世界に飛び込む勇気は鷲にない・・・。

これではアカンと本来学びたかったのと友達欲しさにゼミに入ったものの、ゼミ内で女子ゼミ生同士の内紛に知らず知らずの内に巻き込まれとって、どこか気まずい雰囲気の中、結局そこでも友達はできずに学生時代はアッという間に過ぎてしまった。

そして卒業式の日に『他大学』のジョイトイさんに同行してもらって大学に行った。式には出ずに証書だけもうて、学生食堂に入って、注文して二人で楽しく喋りながら卒業式特別メニューを食べた。

「めっちゃ今楽しい・・・」

その時、鷲の望んどった学生生活に一番近い形が始めて実現した。何で今日で最後の、卒業式の日が一番楽しいねん。しかもその一緒に楽しんどうのが他大学のジョイトイさん・・・。
涙が出てきた。何でやねん。何で今日でここを去るのに、何で今頃になってここの良さに気付くねん。何で急にいとおしく感じんねや。あれ程毛嫌いしとったのに・・・何で・・・。


周りの学生を見とうと、何故か自分の学生時代を思い出した。
勉学にしても、サークルにしても、何にしても悔いの残らん学生生活を送りや〜と彼らに対して思た。

店を出てからそれぞれ別々の方向に別れた。
上機嫌で帰宅して携帯電話見ると元最西端さんからお誘いのメールが入っとった。
駅に向かっとったら父と会うてちょっと話し込んだ。いつもの店に入ると元最西端さんが待っとった。終電まで暫く元最西端さんのマンネリネタに付き合うて、丁度同じ方向に帰る人と一緒に帰った。帰ってから風呂入って、ゆるゆる。